レポート

真珠クレームカルテ32 (2011年12月)

<真珠の白濁化>
1. 調査依頼事項
真珠のペンダント4点を今年の夏ごろ交互に一度ずつ着けただけなのですが、「珠が白濁した状態」になってしまったので調査分析および修復をお願いします、との御依頼です。

 

2. 外観検査
当該品は以下の4点です。
① 11.1mmサイズの黒蝶真珠ペンダント
② 13.5mmサイズの白蝶真珠ペンダント
③ 10.3mmサイズの白蝶真珠ペンダント
④ 8.9mmサイズの白蝶真珠ペンダント
すべての真珠に表層の白濁化が認められます(図1)。

図1 当該真珠4点

 

3. 光学顕微鏡による拡大観察
白濁化した部分を光学顕微鏡で100倍に拡大観察し、個々の様相を図2~5に示しました。一部は表層に真珠表面の結晶成長模様が見えないほどの白色付着物質、および黒色化(図中矢印)した真珠層の浸食孔が観察されます。(正常な真珠層成長模様を図6に示す)

図2 当該真珠1の真珠表面拡大(×100)

図3 当該真珠2の真珠表面拡大(×100)

図4 当該真珠3の真珠表面拡大(×100)

図5 当該真珠4の真珠表面拡大(×100)

図6 正常な真珠表面の成長模様(×100)

 

4. 考察
付着物の分析はしていませんので推定になりますが、化粧品、食品の残渣およびカビ等は見られないことから、汗のような酸性水溶液が付着しそのままの状態にて保管されたため、一部が溶解し表層が「すりガラス状」のような微細な凹凸となり光の散乱現象で白濁して見えたと思われます。
真珠層が酸性水溶液に侵される現象は、本連載真珠クレームカルテNo.5、No.21を参照してください。

 

5. 修復
当該商品の修復は簡単です。弊社商品<パールリフレッシュクロス>を使用し1万分の3~5mmの真珠層を一層剥いて下の新しい真珠層を出してあげれば「てり」は蘇えります(図7,8)。

図7 修復後の商品

図8 修復後のNo.4の真珠表面拡大(×100)

 

※内容、画像ともに当時のまま