レポート

真珠クレームカルテ28 (2011年8月)

<黒蝶リングの褪色>
1. 調査事項
先日某所より在庫商品である黒蝶真珠リングの一部(リング付け根付近)が白く褪色したことについて原因と今後の対策について調べてほしいとの調査依頼に対し、真珠クレームカルテNo.24「クロチョウ真珠の加熱による変褐色の考察」、真珠クレームカルテNo.26「黒蝶連の褪色」を参考に検査を行いました。

 

2. 外観観察
直径約15.5mmのオフラウンド形黒蝶真珠リング(図1)、全体的にテリが良く色調はグリーン系、着色等の痕跡は見られません。

図1 当該商品

 

3. 検査
「褪色」には、真珠クレームカルテNo.26にて報告している通り(ⅰ)表面の「アレ」、(ⅱ)稜柱層起因、(ⅲ)有機物起因の3つの要因が考えられるので以下の機材を用いて観察を行いました。
・LED光透視ライト
・高倍率実体顕微鏡
・紫外線蛍光

 

4. 結果

観察の結果(ⅰ)表面の「アレ」、(ⅱ)内部に存在する有機物による白色化は観察されませんでしたが、高倍率顕微鏡検査(図2)および紫外線蛍光検査(図3,4,5)にて検査商品の白く褪色した部分、他2箇所のキズ底部は稜柱層※1が露出していることを確認しました。稜柱層は感想などにより急速に収縮し、微小な亀裂を作ります。その結果この部分では光の散乱が起こり白く見えるようになります。
※1 稜柱層(りょうちゅうそう):貝殻外部を構成する微小な柱状の結晶から成る構造体。貝の生理異常により真珠内部にできることがある。

図2 底部が稜柱層のキズ拡大

図3 白色部に紫外線照射

図4 白色部に紫外線照射

図5 白色部に紫外線照射

 

※内容、画像ともに当時のまま