レポート

真珠クレームカルテ26 (2011年6月)

<黒蝶連の褪色>
5年前に販売した黒蝶真珠のネックレスですが、お客様から一部の珠の色が薄くなったような気がするという相談を受けました。

 

1. 検査法概要
「褪色」については(ⅰ)表面の「アレ」による白濁化現象、(ⅱ)表層部に内在する稜柱層の乾燥等により発生した微小空隙による白濁化現象、(ⅲ)内部に存在する有機物の乾燥・収縮による白色化などが考えられます。以下これらの現象と合致を追って分析いたします。

 

2. 外観観察
図1に示したようにクラスプ側をNo.1としてNo.41までを試料番号とします。ご指摘の褪色資料はNo.4,11,20,41です。
41個の試料のうち12個が光透過性を示します。(No.1,4,6,7,11,15,16,30,31,32,34,41)これは色素濃度が薄い真珠が12個あることを示しています。
また表面の「アレ」は観察されませんでした。

図1 依頼商品

 

3. Xray透視
試料全体の透視画像からまき厚、稜柱層分布を調査しました。ご指摘の褪色資料については以下の通りです。
No.4 :まき厚0.8ミリ、稜柱層なし
No.11:まき厚1.3ミリ、稜柱層なし
No.20:まき厚0.8ミリ、稜柱層なし
No.41:まき厚0.3ミリ、稜柱層なし

 

4. 分光反射スペクトル測定
図2に3個の試料(No.7,20,41)の分光スペクトルを示しました。特有のクロチョウ吸収が確認できます。

図2 依頼品の反射分光グラフ

 

5. 考察
上記分析では退職の原因は確認されませんでした。ただし全体に色素が薄いため、内部の微小有機物が乾燥・収縮し、その黒味が薄れて一部の真珠が「褪色した」という印象を与えることは推定できます。