レポート

真珠クレームカルテ23 (2011年3月)

<着用で肌が赤くなるネックレス>
「このブラック系真珠ネックレスですが、着色であることをお客様は了解した上で、非常にお気に召しています。しかし着用すると肌が赤くなるということで、その原因を調べていただきたいのです。(一小売店より)」

 

1. 外観および機器観察
“ピーコック系”の7ミリのチョーカーです。サーチライト法では赤紫色を呈し、着色であることは明らかです。偏光顕微鏡拡大では、「銀塩処理」の特徴は出てきません。染料等による着色ではないかと思われます。ただしクラスプ部についている5ミリの真珠は明らかに「銀塩処理」です。

 

2. 微量元素分析
専用装置によりニッケル、コバルト、スズ、パラジウム等々の皮膚アレルギーを引き起こしやすい元素を中心に分析しましたが検出されませんでした。ただしクラスプ部の真珠については銀河検出されました(図1)。

図1 元素分析結果

 

3. 見解
① まずアレルギー性接触皮膚炎について述べますと、症状が消えていても治癒とは言えず、微量なアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質のこと)がやってくると、再びさまざまな拒絶反応を起こすという特徴があります。

② アレルギーを起こす頻度の高い金属は、昭和62年の1年間に東京都済生会中央病院皮膚科の調査では水銀(23%)、ニッケル、コバルト(13.5%)、スズ(12.8%)、パラジウム(11.3%)、クロム(9.5%)の順で、水銀を別にしてジュエリー関連の地金が高位にあることが指摘されています(図2参照)。

図2 アレルギーを起こす頻度の高い金属

(「暮らしの中の皮膚障害」より)

③ 今回の分析で検出された銀は高位ではありませんが、人によってその感受性はまちまちであり、まずは専門医での「パッチテスト」を受け(図3)、自分のアレルゲンを調べることをお勧めします。

図3

 

図2、図3は中山秀夫監修「暮らしの中の皮膚障害」(第一法規出版)を参考にしました。

 

※内容、図ともに当時のまま