レポート

真珠クレームカルテ22 (2011年2月)

<着色の痕跡らしい模様の正体>

 

1. 調査依頼事項
「クロチョウ真珠の表面に着色の痕跡らしい模様があるのですが、ナチュラルか処理か調べてください。」(卸業者)

 

2. 外観観察
グレー系クロチョウ真珠のリングです。トップ付近にルーペで観察すると黒っぽいシミのような模様が僅かに認められます。この模様の存在が着色疑惑を喚起したものと思われます。

 

3. 分光スペクトル測定
クロチョウ真珠は、まずは分光反射スペクトル測定です。「クロチョウ吸収」確認が大原則だからです。図1に示しましたように400,500,700nmに吸収が認められます(図中矢印)。この3つの吸収の深さが各々明瞭であることは、この真珠の実体色が黒色系~グレー系であることを表しています。
またスペクトル全体に染料などの吸収やピークが現れていませんので、着色処理はないと判断しました。

図1 当該真珠の分光反射グラフ

 

4. 模様の正体
光透過法を併用した実体顕微鏡拡大の結果、この模様は図2のような模式図に近いことがわかりました。これは“うろこ”です。この軽微な劣化現象については、本連載No.6で詳細に論じていますが、クロチョウ真珠のグレー系での存在は、当研究所でも初めての現象確認です。
図3にオーロラビューアーで確認した図を掲載しておきます。

図2 該当箇所の模式図

図3 該当箇所をオーロラビューアーで観察した画像

 

※内容、画像は当時のまま