レポート

真珠クレームカルテ20 (2010年11月)

<染毛剤で赤く染まった真珠のネックレス>

 

1. 調査依頼事項
に要因での染毛剤使用ミスによるものと思われますが、ネックレスの幾つかの真珠が赤くなってしまいました。正確な原因調査と修復の可能性について調査をお願いします。

 

2. 外観観察
10.0ミリ以上12.0ミリ未満、総個数35個のシロチョウ真珠ネックレス。21個の真珠に濃淡のバラツキはあるが、赤紫色の着色が見られます(図1)。真珠表面の溶解(“アレ”)や損壊は認められません。

図1 当該真珠

 

3. モデル試験の実施
“ヘナ”および2種の市販染毛剤にてアコヤ真珠を着色、その分光特性を観察しました(図2)。“ヘナ”には特徴的な500nm付近の吸収、600nm付近のピークが認められます(矢印)。

図2 実験珠の分光測定結果

 

4. 被着色真珠の分光特性測定
当該ネックレスの13番の真珠が比較的黒染まっているので、その分光特性を測定しました。参考にほとんど染まっていない中央部の真珠も測定しました。穏やかながら500nm付近の吸収、600nm付近のピークが認められます(図3の矢印)。
このことは着色原因に“ヘナ”あるいはその混在染料が関与していることが十分推定できます。

図3 当該真珠の分光グラフ

 

5. 脱色法の検討
“ヘナ”をモデル着色したアコヤ真珠を常温で3日間、3種の溶剤(水、メタノール、トルエン)に浸漬し、その脱色状態の目視観察および分光特性変化を観察しました(図4)。
結果はメタノール浸漬が有効性を示しました。浸漬によるその他の品質変化は認められませんでした。

図4 実験珠の分光グラフ

 

※内容、画像とも当時のまま