レポート

真珠クレームカルテ10 (2010年1月)

<南洋真珠イヤリングの白濁化現象>

お客様から、5年前に購入した南洋真珠イヤリングの片一方が白くなってしまった原因の調査依頼がありました。恐れ入りますが調査をお願いします。(地方小売店)

 

1. 外観観察から調査方法
① 外観および構造
図1に示しましたが、このようなドロップ状の形態の場合、下部に核が偏在して、その部分が薄巻きになるケースが往々にしてありますからこの部分のまき厚を測る必要があります。また図2に見られるように下部の白濁化した部分は、全く光の干渉現象(真珠光沢)が喪失しています。こういう現象の場合、ⅰ)核が露出している、ⅱ)真珠層が削られている、ⅲ)微小空隙が発生しているなどが考えられます。

図1 当該品

図2 白濁化した部分

 

2. X線透視及び顕微鏡観察
X線透視により、下部のまき厚は0.2ミリ以下であることが判明しました。また顕微鏡による拡大観察でこの部分は真珠層であることが確認できましたので、上述ⅰ)、ⅱ)は否定されました。

 

3. 光透過法による精密観察
下部全体が薄まきであることは、核の縞模様がみえることからも確認できます(図3)。
また表層部に顕著な核われが存在することが判明しました(図4)。

図3 光透過法での当該品

図4 光透過法で確認した核われ

 

4. 白濁化の原因についての推定
① 核われの原因ですが、もともと存在していた小さなわれが、湿度変化などの影響で大きくなったと思われます。
② この大きくなった核われが、真珠層と核の間に「微小な空隙」を発生させたか、あるいは真珠層の中に「微小空隙」を発生させたと思われます。非破壊分析であるため、どちらであるかは不明です。
③ どちらの場合でも「微小空隙」で入射光は散乱を起こすため、この散乱光で光の干渉は起きなくなり、さらに私たちの目には白色として見えるようになります。

 

※画像、内容とも当時のまま