<重度に汚れたネックレスの修復と、真珠てりクロスによるお手入れのお勧め>
1. 依頼内容
小売店様より、「大切なお客様が何年も前に使用してその後お手入れをしないままケースに入れて箪笥の中に収納しておいたもので汚れている感じがします。クリーニングをお願いします。」というご依頼です。
マルガリータ(クレームカルテ45,65,70)で既に報告済ではありますが、クリーニング依頼の中では頻繁に発生するケースなので、再度ご報告いたします。
2.商品データ(図1)
形状: ラウンド系 Silver925 クラスプ付 通常糸組ネックレス
サイズ: 6.0~6.5mm 40.3cm (珠のみ)
珠数: 64個 26.0g
図1 依頼商品
3・診断
① 目視観察
・全珠に付着物がみられ(図2)、手に持った感触は全珠にザラザラ感がありました。
・クラスプ本体から24番目の珠に重度の付着物が見られました。(図2矢印部)
・オーロラビュアーにて表面を観察すると付着物の様子がはっきり確認できました。(図3)
図2 依頼商品
図3 オーロラビューアーにセットした依頼商品(拡散光源による観察)
② 拡大観察
・比較的付着物の薄い部位、付着物のない部位を顕微鏡100倍下にて表面拡大検査をした結果、真珠層構造が認められ真珠であることを確認しました。
・当該ネックレスの珠の表面、孔口などを10倍ルーペにて観察した結果、われ,剥がれは見られず、巻きは充分でした。
クリーニング加工に支障のないことを確認しましたのでクリーニングを行いました。
4. 修復
クラスプ珠、ネックレス本体共に重度の付着物が認められるため、リフレッシュクロスを用いた手磨きとパールリフレッシャーでの磨きを併用して付着物を取り除きました。24番目の珠は特に付着物が取り除き難く、リフレッシュクロスを多用して元の輝きを取り戻しました。その後、真珠てりクロスにて全体を仕上げてクリーニングを終了しました(図4、5)。
図4 修復後の商品
図5 オーロラビューアーにセットした修復後の商品
5. まとめ
本件のような症状は、ネックレスを使用した際に汗などの皮脂分泌物、及び化粧品等の水分油分と汚れが混ざり合って付着し、その付着物の粘着性が高いと真珠の表面に残るために起ります。またその付着物が酸性であれば炭酸カルシウムからなる真珠層表面を溶かして微小な凹凸を発生させ、真珠層表面のテリが鈍くなったり、ザラザラした手触り感になったりします。今回の様に通常使用による荒れならば、ほとんどの場合パールリフレッシャーを用いマイクロ研磨することによって修復が可能です。
真珠製品は、ご使用後にお手入れが不可欠であることをお客様にご説明し、そしてお手入れの際には“真珠てりクロス”※をご使用なさることをお勧めしました。
※真珠テリクロス:撥水性に優れ汚れが付き難く、また付着した汚れも拭き取り易く、耐久性、電気絶縁性にも優れ、真珠表面を滑らかにすることで表層のテリが向上するという利点がある