レポート

クレームカルテNo.79 (2015年11月)

「ワイヤーでも切れる事もあります」

通常、私達はお客様の商品をお預かりする際、常に細心の注意を払って丁寧に取り扱っていますが、先日弊社社内での作業中に「ワイヤー仕上げのネックレスが切れる」という事案が発生しましたのでその経緯と原因の仮説を報告します。

1、商品データ
形 状:ホワイト系アコヤ真珠ネックレス
サイズ:8.5-9.0mm (47珠)
仕上げ:0.4mm ナイロンコーティングワイヤー 両サイド4個シリコン付き

 

2、ワイヤー切れ発生時の状況
所定の作業終了後、お客様から送付されたビニール製透明チャック袋(サイズ:120mm × 85mm)に収納するため、当該商品を小さく二重連状態(図1)にした際「パンッ!」とはじけるように、クラスプ(受け側)から約7.5cmの場所でワイヤーが切れました(図2)。

図1 ビニール袋収納状態

図2 ワイヤー切断状態

 

3、観察
今回切れたワイヤーの断面を顕微鏡で観察すると、あたかも鋭い刃物でスパッと切ったような切断面です(図3)。また、ワイヤー表面のナイロンコーティング部分の傷みが複数箇所確認できました(図4)。

図3 ワイヤー破断面

図4 ワイヤー表面キズ

 

4、原因・仮説
真珠の珠の孔口は思っている以上にシャープです(図5)。今回の場合、ネックレス全体の締めが元々きつく仕上げられていたのをさらに小さく二重に巻いた事によって、珠と珠が支点となりワイヤーに過大な張力が掛かった状態(図6)となり、珠の孔口が刃の役割をして切断に至ったと考えます。

図5 孔口の状態

図6 孔口支点模式図

 

5、まとめ
一般的にワイヤーは、通常使用では切れる事はないと考えられています。本件商品もエンドユーザーへ渡る前の未使用商品であり、外見からは全く問題ないように思えますが、状況によっては今回のように一瞬にして切れる事があります。
このような切断事故を防ぐためには次のような方法が考えられます。
ⅰ)ワイヤー仕上げにてネックレスを作成する際、極度に強く締めすぎない。
ⅱ)ワイヤーのテンションを軽減させる為、全ての珠の間にシリコンを挿入する。
ⅲ)糸でオールノット仕上げをする。
ⅳ)収納する際は、そのネックレスのサイズ・状態に見合った大きさの物を使用する。
いずれにしてもお客様の商品をお預かりする際は「ワイヤーであっても切れない保証はない、珠と珠の間にあるシリコンは劣化する」を頭の隅に入れてお預かりし、必要に応じてワイヤー交換を行う事、また万が一切れた際、修復のために、あらかじめ写真撮影や珠数、連の長さ、全体重量のいずれかを控えて置く事などの予防措置をお勧めします。

 

※内容、画像ともに当時のまま