<コンクパールの褪色>
今回は、コンクパールの褪色について報告します。
1. 目的
先日開催されたJJF会場内にて、高額なコンクパールを多数展示されていた業者様より「コンクパールは経年劣化で色が褪色してしまうと聞いたが、どの位で色が変わるのか教えてほしい」との問い合わせがありました。すでに報告されている恒温槽を使用した加熱テスト(註1)と、新たに煮沸、紫外線ライト照射、軟X線照射した場合の色調の変化をテストしましたのであわせて紹介します。
2. 検査方法
① 恒温槽を使用した加熱テストでは、ホースコンク(註2)貝殻片3個、ピンクガイ(註3)貝殻片3個を使用して、80℃24時間、120℃1時間加熱し、経過を観察しました(図1)。
図1 恒温槽を使用した加熱テスト
② 今回の新たなテスト試料としてピンクガイ貝殻片4個を使用、4つのうち1つをブランク、他の3つをそれぞれのA,B,Cテスト用サンプルとして経過を観察しました(図2)。
A:沸騰しているビーカー内にサンプルAをつり下げ煮沸、3時間後に観察(図3)。
B:.紫外線蛍光ランプ(370nm)下にサンプルBを置き3時間後に観察(図4)
C:軟X線透過装置内(50kv、3mA)にサンプルCを置き3時間後に観察(図5)
図2 切断したサンプル片
図3 煮沸3時間:サンプルA
図4 紫外線照射3時間:サンプルB
図5 軟X線装置内3時間:サンプルC
3. まとめ
テスト結果は図2~5の通り加熱、煮沸、軟X線テストでは肉眼ではっきりわかる褪色があり、紫外線テストBではわずかな褪色が認められました。宝石鑑別でよく使用される蛍光X線(非破壊での成分分析が可能)でも褪色することが確認されています。また、放射線照射でも褪色することが報告されています(註4)。尚、今回はピンクガイのピンク色の箇所の貝殻片で行いましたが、コンクパールには様々な色調があり、各色とも同様に褪色すると言われています。
以上のことから、高額であるコンクパールの展示、製品加工時などでは褪色の可能性を考慮した取り扱いが必要です。
註1:渥美郁男ら「ホースコンク(ダイオウイトマキボラ)とホースコンクパールの断面構造の考察」2012年宝石学会報告
註2:ホースコンクパールを産するダイオウイトマキボラ貝種で本来のコンクガイとは別種
学名Pleuroploca
註3:カリブ海全域に生息しコンクパールを産する
学名Strombus gigass 別名コンクガイとも呼ばれる
註4:2014年宝石学会誌
※内容、画像ともに当時のまま