レポート

真珠クレームカルテ56 (2013年12月)

「キズ消しお願いします」

某業者様が以前販売した白蝶真珠ペンダントで「トップの正面上部にある白い筋模様のキズが目立つので何とかならないか?」との相談がお客様からあったが、このキズは仕入れの際には無かったからどこかにぶつけて出来たキズ(後キズ)だと思う。目立たないようにしてほしい、との依頼がありましたので報告します。

1、 目視観察
図1矢印部に引っかきキズのような白色筋模様キズが確認出来ます。サーチライト法にて観察すると、珠全体に白色キズが点在しているのが確認できます(図2)。真珠クレームカルテNo12で紹介している当たりキズとは様相が異なって見えます。

図1 当該真珠

図2 サーチライト法で見た当該真珠

 

2、 顕微鏡観察
顕微鏡にて白色キズを100倍に拡大して観察すると通常の当たりキズは凹みキズとなりますが、当該商品のキズは凸キズであり(図3)、表層の条線模様が当たりキズであればキズ部分にて途切れてしまうのに対して途切れていない事から(図4)、このキズは当たりキズではないことが確認されました。

図3 凸キズ(×100)

図4 キズ部にある成長模様

 

3、 まとめ
上記観察から、このキズは真珠層内部に発生した空隙により光が散乱し白い筋模様として見えている養殖キズと判断します。また、このキズは温湿度等の変化による膨張・収縮の繰り返しから微小空隙を押し広げキズの顕在化を促し見えやすくなった(図5)のではないかと推定します。

図5 微小キズ発達の模式図

 

4、 修復の可能性
修復は、真珠層内部のキズですから不可能ですが、弊社開発のマイクロパーマネント加工を施してあげることによって目立ちにくくなる可能性はあります。

 

※内容、画像ともに当時のまま