<異なる2種類の凹みキズ>
お客様の小売店からエンドユーザーへ黒蝶真珠商品を納品後しばらく経過した後に、「白いキズのようなものが付いている」といったクレームが稀に発生すると耳にします。これは、後日そのようになるだろうと予見できる養殖キズに気付かず販売してしまったために起きてしまった事象です。このようなクレームを避けるためには、そのキズがどのようなキズなのかを知る必要があります。
後日発生したように見える白キズ
① 外観特徴
真珠養殖過程においてエクボと呼ばれる凹みキズができることがあります(図1矢印部)。この凹みキズには、凹みの底部が真珠層の場合と稜柱層の場合があります。一見同じような凹みキズに見えますが、底部稜柱層では数年後に白くなって目立つようになってしまい、後から発生したように見える場合があります。この二つは大きく異なる凹みキズなのです。
図1 エクボと呼ばれる凹みキズ
② 成因について
底部が真珠層の場合には経年変化はほとんどありませんが、底部が稜柱層の場合には凹みの表層にある稜柱層が水分を多く含むため、経年により乾燥、収縮し隙間が発生します。凹みキズ表面の稜柱層にできた隙間で光の散乱が起きて白キズとして見えやすくなります(図2)。
図2 白キズ発生のメカニズム模式図
③ まとめ
凹み底部が稜柱層の場合、乾燥により稜柱層に亀裂が発生し光の散乱が起こり、特に黒色系真珠では白色が目立つようになり、白キズ発生とされます。
④ 対策
1) 凹みキズの底部が真珠層か稜柱層かを確認する。
ⅰ.蛍光検査:黒蝶真珠は紫外線照射下の蛍光検査での発光が弱いが、稜柱層は発光する。
ⅱ.拡大検査:底部真珠層では成長模様(図3)が確認でき、底部稜柱層では成長模様は見えず、ドロッと溶けたように見える(図4)。
2)底部稜柱層の場合、稜柱層部の乾燥を止めるため接着剤(図5)などで固定化する方法がある。
図3 底部真珠層の成長模様(×100)
図4 底部稜柱層の成長模様(×100)
図5 接着剤
※内容、画像ともに当時のまま