レポート

真珠クレームカルテ 48 (2013年4月)

<地金の変色>
メンテナンスマスターK氏より「真珠の付いているシルバー製品の地金が変色してしまったので調査しました」と情報をいただきましたので紹介いたします。
1. 商品
Silverブローチ 真珠付き

 

2. 現状観察
・真珠には劣化現象が見られない(図1)。
・シルバー枠の表面が緑色に変色している部分がある(図2)
・枠の表面だけではなく裏側も同様の状態である(図3)
・緑色の部分は、枠のどこかに集中するのではなく、全体に拡散したように点在している

図1 当該商品真珠部分

図2 商品変色部

図3 商品裏側

 

3. 検査
原因究明のため、外部検査機関へ下記分析を依頼しました。
① エネルギー分散型蛍光X線分析装置による定性成分分析
② 走査型顕微鏡による観察

 

4. 結論
・表面を少し削り、表面のメッキを剥がして測定した結果、素材の組成はAg(銀)が93.2%、Cu(銅)が6.8%だった(図4)。これは、Silver925であることを証明している。
・表面の変化していない部分を測定した結果、Rh(ロジウム)とNi(ニッケル)が検出された(図5)。これは銀の表面を滑らかにすることと変色防止のために施されたニッケルメッキとロジウムメッキの素材が結果として現れた。
・表面が緑色に変化した部分を測定した結果、Cl(塩素)が検出された(図6)。これは緑色部が塩化ニッケルになっていることを示している。

図4 蛍光X戦による地金測定結果

 

図5 地金の変色していない箇所の測定結果

 

図6 地金の緑色部の測定結果

 

以上の結果より本件発生原因は以下のとおり推定した。
① 原因は汗ではない。
② 塩素系漂白剤または塩素系殺菌剤当の塩素を含んだものが付着した。
本件は、当該商品を身につけていた状態で塩素系薬品を散布して使用したために商品に付着し金属の劣化が発生した、またその薬品は中性からアルカリ性だったために真珠に影響がなかったのではないかと推測する。

 

※内容、画像ともに当時のまま