<染色処理珠の剥離>
1. 依頼内容
10年以上前に販売した染色処理のアコヤ真珠をお客様が使用していたところ、「真珠が割れてしまいました。直してください」と持ち込みがあったのですが、原因によりお客様への対応の仕方が違いますので調べてください、との小売店様からの依頼です。
2. 診断と結果
① 商品観察
形状 :念珠 セミラウンド系(図1)
サイズ:7.0~7.5mm
色 :グレー(染料および放射線照射による処理の痕跡を認める)
外観 :孔口のわれ、ひびの入っている珠多い
図1 当該商品
② 剥離の原因
われてしまった珠を観察すると、珠全体にひびが入っています(図2)。ほかの珠にも同様に真珠層にひびが見られます(図3,4,5)。
挿核手術の直後に様々な要因で真珠層以外のものが分泌されることがあります。異質層と総称していますが、大半は有機物と稜柱層から出来ています。
本件は、染色処理をするにあたり事前に余分な有機物の水分を取り、その後稜柱層および核と真珠層のあいだに染料を入りやすくするため何度も漂白処理を繰り返した。これらの処理により異質層が収縮し、核と真珠層の間に隙間ができてしまい、そこへ外部から何らかの圧力がかかりわれが発生、そのわれが広がり真珠層が剥離した(図6)のではないかと推定しました。
図2 ひびの入った珠
図3
図4
図5
図6 剥離した真珠層
③ 責任の所在と修復の可能性
エンドユーザーの取り扱い上の不手際はありません。このような欠陥を内在している商品を販売してしまった側の責任です。
修復は不可能です。
※内容、画像ともに当時のまま