<3.11東日本大震災による被災真珠の修復>
この度当研究所へ「3.11東日本大震災にて被災した黒蝶真珠なのですが元通りに修復は可能ですか?」とのことで某卸業者様より真珠のクリーニング依頼が持ち込まれましたのでご報告いたします。
1. 依頼商品詳細
・形状 ラウンド系
・サイズ 8.0~11.0mm
・色 ブラック/シルバー
・珠数 47珠
2. 目視観察
肉眼では、連全体の半分位の珠が塩かぶれ様の銀色に変色してしまい「てり」もなくアクセサリー店に並んでいるイミテーションネックレスの様です(図1,2)。
図1 当該真珠
図2 図1商品の中の1個
3. 詳細観察
顕微鏡100倍下にて観察してみると、真珠層表層が傷み過ぎて真珠特有の条線模様がまるで確認できないことから通常最も頻繁に起こる光沢鈍化の代表ともいえる汗、皮膚分泌物、化粧品などの油分によるカビ等汚れの付着および真珠層表面数層の溶解とは違い、さまざまな薬品等が混ざり合った海水に数日間浸されたことにより、真珠層の溶解が起きていると推測します(図3参照)。
図3 図2真珠の表面拡大
4. 各種検査
まず、今回の被災真珠は被災程度の弱いところを見ると黒蝶真珠と推測することから、母貝鑑別の手立てとして可視分光光度計にて黒蝶吸収の確認をおこない、上記真珠層の溶解の深さを推測し又かつ真珠層の厚さを確認するために軟X線レントゲン検査をおこないました。
5. 修復作業
上記の検査から真珠層の溶解は表層部にて起きていること、クリーニングに十分なまき厚があることが確認できましたので、今回は傷んでいる真珠層を構成している結晶(炭酸カルシウム)層をミクロンレベルにてはがしてその下のきれいな層を出す修復作業を行いました。
6. まとめ
ミクロンレベルにての修復作業のため、お預かり時の形状、サイズ等を変化させることなく、今回のように水害でてりを失ってしまった真珠も一定の条件が整えば輝きをよみがえらせることは可能です(図4,5,6)
図4 修復後の当該真珠
図5 修復後の図2真珠
図6 図5の真珠表面拡大
7. 作業完了商品詳細
・形状 ラウンド系
・サイズ 8.0~11.0mm
・色 ブラック
・珠数 47珠
この度、東日本大震災に遭われました方々には心よりお見舞い申し上げます。
尚、真珠科学研究所では東日本大震災による被災真珠の無料修復を行っております。詳細はお問い合わせください。
※内容、画像ともに当時のまま