レポート

真珠クレームカルテ27 (2011年7月)

<「PS加工真珠」の物性について>
1.調査事項
PS加工アコヤ真珠連※の物性について同様の未処理アコヤ真珠連と比較しながら観察、実験しました。
※インターネットを通して実施依頼を行った特許2868730号に基づくPS加工品であることを確認しています。

 

2.外観観察
目視では、両者の違いはほとんどありませんでした(図1)。しかし真珠をこすり合わせてみると、未処理に比べPS加工真珠は引っ掛かりが少なく平滑に感じられます。

図1 緑:未処理連、赤:PS加工連

 

3.分析
①ビッカース硬度計で真珠の硬度を測定しましたが、PS加工と未処理の違いはありませんでした。また、蛍光X線分析による元素分析※でも、違いは確認できませんでした。
※使用した蛍光X線分析機器では、フッ素元素はほぼ分析不可

②顕微鏡での表面拡大観察(100倍)では、どちらも真珠の成長模様があり、違いは確認できませんでした。電子顕微鏡でさらに高倍率(3000倍)にすると、何個かのPS加工真珠の表面には、亀裂のような模様が確認できました(図2,3)。
PH2~5までの緩衝液に各々真珠2個ずつ30分間浸漬し、浸漬中の状態と浸漬後の表面を顕微鏡で観察しました(表1)。賛成が強くなるほど、浸漬中に真珠表面についた気泡は大きくなり、浸漬後の表面状態はより侵食が進んでいましたが、PS加工と未処理の真珠の違いは観察できませんでした(図4,5)。

図2 未処理真珠表面

図3 PS加工真珠表面

表1 酸性緩衝溶液浸漬実験結果

 

図4 未処理真珠耐酸試験

(左から、対照、PH5、PH4、PH3、PH2)

図5 PS加工真珠耐酸試験

(左から、対照、PH5、PH4、PH3、PH2)

 

4.考察
電子顕微鏡観察では結晶の形に何らかの変化が起こっている可能性のある真珠もありましたが、今回観察したPS加工真珠連と未処理真珠連において、明確な物性の違いは確認できませんでした。
今後の研究として、
① 一部真珠に発生した亀裂模様の原因追求
② 加速試験による経年変化等の観察
を計画しています。

 

※内容、画像は当時のまま