レポート

真珠クレームカルテ5 (2009年8月)

<アコヤ真珠の白濁化>

1. クレームの内容
8.0~8.5mmのアコヤ真珠チョーカーですが、2年前に小売店に販売しました。顧客の手に渡ってから一ヶ月余で「荒れた」状態になってしまったそうです。この原因について調査をお願いします(某卸会社)。

 

2. 診断結果
① 形態観察
ほとんどの真珠が白色の付着物質で覆われています(図1)。特に孔口付近が顕著です。これは肌との接触がしにくい場所なので、摩擦による除去がされにくく残存してしまったためだと思われます(図2)。また、付着物質の付近は顕微鏡拡大(×100)で浸食孔が観察されます(図3)。

図1

図2

図3

② 原因分析
付着物質の分析はしていませんので推定ですが、化粧品などが汗と一緒に真珠に付着したまま仕舞われたため、このような現象が起きたものと思われます。水分の蒸発による乾燥までに時間がかかったため、一部の箇所が酸性溶液で溶解したものと思われます。

 

3. 分析ノート:汗による溶解
真珠のクレームの99%以上を占める現象の典型です。“汗によって真珠が侵される”という現象です。この点について詳述します。
① この現象が起きるためには、ⅰ)粘着性のある、ⅱ)蒸発しにくい、ⅲ)弱酸性~酸性の水溶液と、真珠が長時間接触する必要があります。
② 真珠の主成分である炭酸カルシウムは酸性水溶液と接触しますと、次のような反応例を起こし溶けだします。
CaCO3+2HCl→CaCL+HCO

 

※画像は当時のまま